調査が入り、報告書が一般公開されるイギリスの学校(公立校編)
- Ofstedとは?
子供をイングランドの学校に進学させることを考えたことがある方なら、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?OfstedとはOffice for Standards in Education, Children’s Services and Skillsのことで、教育や保育、その他子供の社会保障に関わる機関の実態調査を実施し、かつ一部規制をかけることができる国の行政省庁です。大きな特徴はその結果を公表している点で、Ofstedのレポートは国会、親や保護者、各種委員へ報告される、と明示されています。
Ofstedは子供たちを第一に掲げており、行政機関として内部に入って実態調査を行うことで教育や社会保障の基準をあげて人々の生活を改善することを目標としています。実際のオペレーションは以下の4部門に分かれてそれぞれに必要な項目について調査されます。
- registered early years provision (幼児教育・保育施設)
- maintained schools and academies (主なる公立校とアカデミー)
- non-association independent schools (一部の私立校)
- further education and skills (Six form以上の教育・技能等トレーニング機関)
教育に関わる専門家が、対象となるすべての施設に赴き、主に4つの点、quality of education(教育の質)、behaviour and attitudes(言動や態度)、personal development(自己啓発、個人としての成長)、leadership and management(運営側のリーダーシップと管理体制)について調べていくわけですが、一つ一つのコメントも興味深いものの、やはり一番注目されるのはOverall Effectivenessと言われる総合評価ではないでしょうか。Outstanding(優良)、Good(良)、Requires Improvement(RI;要改善)、Inadequate(不適切)の4つのいずれかがつき、評価が変わると上がっても下がっても非常に大きな影響力があります。地域の父兄・保護者の注目が集まることはもちろん、公立校は学区と密接に関係するので周辺の土地の価格も変動します。また、評価を落とされた学校の校長先生が自ら命を断つという悲劇まで起こっており、2023年にはすべてのOfstedの調査が一時的に中止になったこともありました。今後、政権が変われば方針が変わることもあるでしょうし、2024年から就任した新しいChief InspectorのSir Martyn Oliverの元、変革もされていくことでしょう。しかし、比較的自由度の高いシステムの中で運営されている教育機関においては、何らかの形で水準を保つ機能も必要であり、Ofstedが担っている役割はイギリスの制度の中では重要であると言えるのではないでしょうか。
- 気になるOfstedの調べ方
OfstedのRating(Overall Effectivenessのこと。総合評価)の調べ方は以下のリンクから調べられます。
特定の学校や施設を調べたいなら、Nameのボックスに直接名前を入力して検索すれば、該当するレポートがあれば出てくるでしょう。住んでいる地域全体から調べたいなら、Location or Postcodeにその地域の名前やポストコードを入れます。学校でしたらEducation and Trainingを選択し、フィルターにて該当する種別を指定して検索すれば、一覧の中にRatingも表示されます。未就学児対象の幼稚園や保育施設、Childminder(個人で未就学児を預かるサービス)をお探しなら、Childcare and early educationからアクセスできるでしょう。
- 最新の統計より(2023年12月のデータから)
2023/2024年度は2024年3月現在も続いていますが、2023年12月31日時点において本年度の公立校に対する調査実施件数は2,611件となり、うち1,604件がGraded inspectionと呼ばれる約4年ごとに実施される総合評価のつく調査でした。16%がOutstanding、68%がGood、15%がRequired Improvement、1%がInadequateとなり、これにより昨年以前のレポートを含めた各学校における最新の総合評価で分類すると、対象となる21,805件のうち15%がOutstanding、75%がGood、8%がRI、2%がInadequateとなりました。つまり公立校においては90%がOutstandingもしくはGoodの評価を受けていることになり、2023年8月31日時点の結果と比べると1%の上昇で、2019年の86%から着実に数値をあげてきており、今回の90%の大台に到達しました。
- 各国それぞれに実施
最後になりましたが、Ofstedはイングランドの主に公立校のみ(一部私立校含む)を管轄しています。イングランド、スコットランド、北アイルランド、ウェールズでそれぞれ国家として機能しており、内政はそれぞれが定めているためです。イングランド以外の調査機関は以下の通りです。
北アイルランド:ETI (Education and Training Inspectorate)
スコットランド:Education Scotland
ウェールズ:Estyn(His Majesty’s Inspectorate of Education and Training in Wales)
次回、イングランドの私立校の調査機関、ISI(Independent Schools Inspectorate)について少し見てみようと思っています。
出典
Gov.uk. Ofsted About Us
Ofsted Ofsted Strategy 2022-2027
Ofsted Main findings: State-funded schools inspections and outcomes as at 31 December 2023